今回はちょっと大きい小中型コイ科のHenicorhynchus属の紹介です。
Henicorhynchus(へ二コリンカス)属はカンボジアで3種確認しました。
その中でも最もたくさん採れる種がHenicorhynchus siamensisです。
種小名にもあるようにタイの個体が模式標本のようですが、
そのタイをはじめ、インドシナには広く分布する種です。
この種は特にきれいな模様もなければ色も単調なので地味で、
観賞魚としてはあまり人気のある種ではないようですが、
インドシナのコイ科水槽をイメージしている方には欠かせないほど
重要な魚です。とりわけカンボジアにおいては
通貨単位のリエルと同じ名を持つ魚で、
現地名をトライ・リエルといいます。
どちらが先についた名前かは知りませんが、
通貨と同じ名を持つということはそれだけカンボジアに
強く根付いた種であることは間違いありませんよね。
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定置網ダイ漁で捕獲されるリエル
主に雨季が終わりトンレサップの水位が引き魚がメコンへ帰るときに設置され捕獲します。 |
この魚はカンボジアに広く分布しているのですが、
主な生息地はメコン・トンレサップなどの大水域です。
水路や湿地には殆ど進入しないのですが、
生息場所での生息密度は非常に高く、
定置網などを調査すると8割はこの魚という事もよくあるほどです。
漁獲された本種は主に魚醤(魚の塩辛ペースト)や魚醤油(タック・トライ)に加工されます。
サイズも5-10cmほどの魚なのでこれらの加工には適しているんですね。
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大規模漁だけではなく家族単位での零細漁業でも
本種は捕獲されます。
写真をみても分かるようにものすごい量です。 |
下の写真の個体は上のHenicorhynchus siamensis ではなく、
Henicorhynchus lineatusという違う種です。
こちらはH.siamensisとは違い大水域だけではなく中河川や小河川にも侵入します。
また、時には山間部の河川でも見かけることがあるので
万能型の魚でしょうか(笑)
でも、この種はH.siamensisよりやや小型で、体表に縦縞が数本入り、ややスレンダーです。
つづいて、下の魚はHenicorhynchus lobatusです。
上の2種よりもさらに小さく、生息場所はH. lineatusとほぼ同様です。
もし、このHenicorhynchus属を見かけたら是非観察してみてください。
日本で言えばギンブナやニゴロ、キンブナのような存在ですね。
単調ですが、逆にシルバー一色に輝く魚体の魚が意外と好きです。
水槽に顔を近づけて魚体を観察するとその輝きや凛とした姿に惚れてしまいます(笑)
ですから、以前紹介したHypsibarbus属が大好きで、暇なときは鱗を近くで見て楽しんでいます(笑)