最近は調査に出ないこともあり、フィールドネタが少なかったので、
久しぶりにダトニオプロジェクトとしてダトニオ漁の一つをご紹介いたします。
ダトニオプロジェクトの報告ももう91回目なんですね!!
あっという間ですね。
さて、今回ご紹介するダトニオ漁は実はダトニオを採るために行う漁ではなく、
この漁をすると、ダトニオが採れることがある!という漁です(笑)
場所はトンレサップ川やメコン河なので
おそらくフォーバーダトニオがメインになるかと思いますが、
トンレサップから流れてきたプルケール(本命のダトニオ)も入る可能性があります。
この取材は昨年行ったものなのですが、
先ずは漁師さんに話を聞いて、
網を上げてもらうお願いすると、明日やるという事が決まりました!
先ずは前日の夕方、米ぬかを大量に定置網の中に撒きます。
たぶん小型の魚を集めておくためですね。
定置網は川の岸際に設置されており、
竹の杭をたくさん打ち込んで長方形の囲いをつくります。
その囲いの中に無数の枝が沈めてあります。
翌日は朝から枝の回収や囲い網を解いていく作業が永遠と続きました。
網がしっかりとまわりを囲うと、ひとまずは安心です。
網がだんだんと狭められていくと、
中に入っている魚が飛び跳ね始めます。
水中に沈められた枝はホントに無数にあり(笑)、しかも水深も3mほどはあるので、
コンプレッサーで加圧した空気をホースを通して、先端を口でくわえて
潜水しながら枝を撤去していきます。
自由に動ける単独のボンベを使った潜水ではなく、
コンプレッサーを使って空気を取り入れるフーカーシステムは
僕も水族館で散々やっていたので見慣れたもんですが、
ここで使われているコンプレッサーがとても古いのと、
オイルを使って動くコンプレッサーなので
圧縮空気内にオイルが混合するため
それを吸うのはあまりよくないんですよね。
日本ではオイルレスのコンプレッサーがあるので、
人体に影響が及ばないように安全なコンプレッサーを使用します。
オイルレスコンプレッサーのピストンは焼けないか心配ですが、
専用のシリコンリングを使っているので
オイルレスで動くことができる優れものです。
また、写真のお兄さんの様に
ホースをくわえて潜水しながらホースから空気を吸うのは意外と難しいんでよ。
初めてだと、できる人は少ないと思います。
絶えずホースから空気がボコボコ出てきているので、
必要な時に歯をうまく動かしてホースから空気を取り入れて、
今度は空気が入らないようにしながら、
体の中の空気を出さないといけません。
日本だと、こんなスタイルで業務をしたら怒られちゃうでしょうね。
でも、僕はけっこう好きですね(笑)
(これは危ないので真似しないで下さいね)
さて、水中の枝をすべて撤去したら、
後は網を徐々に狭めていき、
魚を追い込むだけです。
網目が意外と大きいので
小さなグラスパーチなどはみな引っ掛かってしまいます。
下の写真くらいの大きさまで網を狭めたら、
網ごと、船で水上の家まで引っ張り、
家で選別して業者さんに売りました。
100kgくらいの魚が採れたのですが、
残念ながらその中にダトニオはいませんでした。
一番多かったのはこの時期川を下って来る
トライ・リエルと呼ばれるコイ科の小型魚です。
魚醤や魚醤油に加工される重要な原料です。
その他もアクアリウムフィッシュとして人気でキレイな
Epalzeorhynchos frenatusなどや50cmほどのレッドスネークヘッドなど
約20種類ほどの魚が見られました。
小型の魚が集まれば必ずその魚を食べる大型魚もつきますからね。
ダトニオプロジェクトは長い目でコツコツとやっていかないと
目的を達成できないものです。
そして、トンレサップの謎はまだまだ解明されていません。
この湖の謎とダトニオの関係は必ずあると思っています。
繁殖のための親魚確保も重要ですが、
フィールド環境の把握も大切な情報です。
これからももっといろいろな情報を得られるような
調査をしていかないといけません!
もっと頑張らないと!